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なぜ「Peatix」は世界27カ国で愛されるサービスになれたのか。その誕生と成長の軌跡を創業メンバーが語る――Founders Night Marunouchi vol.1

なぜ「Peatix」は世界27カ国で愛されるサービスになれたのか。その誕生と成長の軌跡を創業メンバーが語る――Founders Night Marunouchi vol.1

2019年10月30日(水)、東京21cクラブにてスタートアップの創業者がサービス立ち上げのきっかけから成功までの軌跡を語る「Founders Night Marunouchi」を開催しました。

同イベントは丸の内に拠点を置く国内外のスタートアップや大企業が集まるオープンイノベーションに特化したコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」との共催。

初回となる今回は主催者であるPeatix Inc. CEO原田卓さん、Peatix Japan株式会社 代表取締役の岩井直文さん、同取締役の藤田祐司さんが登壇し、創業秘話や、これまでに直面した危機と打開のきっかけなどを語りました。

日本に留まらず、アメリカ、シンガポール、マレーシアなど27カ国で利用され、会員数400万人を超える同サービスはどのように生まれ、成長したのか――。Peatix株主でもある株式会社ドリームビジョン代表の平石郁生さんがモデレーターを務め、その秘密に迫りました。

 

前身となるOrinoco株式会社でのサービス開発秘話

Peatixの前身となるOrinoco株式会社の設立は2007年。アマゾンジャパン出身の創業メンバーが「大企業の資本力やシステム、販売チャネルに頼らず、自分たちの力でビジネスを立ち上げたい」という想いのもとに集ったのが始まりでした。

原田さん「創業当時、私はファッションアイテムを扱うオンラインストアを展開するYOOXジャパン代表取締役を務めており、岩井はウォルト・ディズニーの国内EC部門責任者、藤田はアマゾンジャパンでマーケットプレイス事業の営業統括をしていました。

全員、外資系企業で経営やマネジメントレイヤーを経験して成功体験を積んでいたので、起業してもきっとうまくいくだろうと根拠のない自信があったんですよね」

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しかし、Peatixのリリースまでは、それから4年の年月を要したと原田さんは振り返ります。Peatixのリリースに至るまでに挑戦したサービスの概要と撤退理由が語られました。

まず始めにOrinocoが取り組んだのは、ユーザーが作成した文章や音楽等を自由に投稿し、売買できるマーケットプレイス事業でした。

藤田さん「当時は携帯小説などのユーザー発信型コンテンツが流行っていたので、投稿数は順調に増えていきました。しかし、実力のあるクリエイターが集まる仕組みが作れず、校閲も行わなかったため、コンテンツの質がなかなか上がらなかった。その結果、作品を買うユーザーは増えず、売上は伸び悩みました。結局、半年後にはサービスをクローズしました」

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次に挑戦したのは、日本進出を図る米国企業のマーケティング代行・コンサルティング事業でした。経営陣の外資系企業での経験が生かされ事業は軌道に乗り、SurveyMonkeyやBitlyといった大企業と次々に提携。2010年秋には黒字化を果たします。

しかし、ここで経営陣は驚きの決断を下します。それは黒字化したばかりのマーケティング代行・コンサルティング事業からの撤退でした。

原田さん「黒字化した翌週に経営陣で集まって『僕たちは本当にこの事業がやりたかったのか』を話し合いました。自分たちでサービスを作りたくて起業したはずだったのに、いつの間にか他企業のサポートに回ってしまっていた。そこで、既存事業からは撤退し、新規サービスの立ち上げに一から取り組むことを決めました」

 

Peatixリリース直後に東日本大震災が発生。イベントが次々と中止に

自分たちのプロダクトを作る——その思いを実現すべく経営陣が目をつけたのが、チケット販売サービスでした。

原田さん「私は新卒でソニー・ミュージックエンタテインメントに入社し、多くのアーティストのイベント開催を手伝ってきました。その際、既存のチケット販売プラットフォームの手数料の高さや、チケット印刷・郵送作業の煩雑さなど、様々な課題を目の当たりにしてきました。そこで、主催者の負担を軽減できるサービスを作れないかと考えたのです」

そして、誰でも気軽にイベントチケットの販売や集客ができるサービス、Peatixを構想。2011年度末にはマーケティング戦略の策定やプロダクト開発が終了し、全てが順調に進んでいるかのように思えました。

しかし、リリースを目前に控えた2011年3月、東日本大震災が発生。開催が予定されていた多くのイベントは中止になり、マーケットがほとんど動かない状態が数ヶ月続きました。

岩井さん「全く想定もしていなかった出来事でした。しかし、悪いことばかりではありませんでした。震災復興支援を行うNPOが、チャリティーイベントのチケット販売に、Peatixを利用してくれるようになったのです。我々も復興の役に立ちたいと、NPOに向けた手数料割引を実施し、応援する仕組みを整えました。この時にPeatixを使ってくれた方々が復興後も継続的なユーザーとなってくれたことで、徐々に認知が広がっていきました」

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また、震災の影響も徐々に落ち着きはじめた2011年10月。ある大物アーティストのイベントチケット販売を請け負った際にも、思わぬ事態が発生しました。

藤田さん「アーティストの人気が凄まじく、発売が開始されると同時にアクセスが集中。1秒間に10万回以上クリックされ、一瞬にしてサーバーが落ちてしまったのです。ファンの方々が『Peatixが落ちた。チケットが買えない』『Peatix、許さない』と次々にTwitterで呟き、『Peatix』というキーワードが一時トレンドの1位になってしまいました」

ユーザーも増え、サービス認知は広がっていたものの、当時の運営メンバーはわずか5人程度。開発人員も少なく、カスタマーサポート等も経営陣が自ら行なっている状態でした。

この出来事を機に、Peatixでは資金調達を開始。2012年に500 Startups、伊藤忠テクノロジー・ベンチャーズなどから100万ドルのシード資金を調達し、システム改善やカスタマーサポートの強化を進めていきました。

 

目指すのは「チケット販売サービス」ではなく「コミュニティプラットフォーム」

2000年代初頭、米国では「Meetup」「Eventbrite」「Eventful」といったイベント集客・チケット販売サービスが次々に誕生。その成功に影響を受け、国内でも2010年以降、各社から同様のサービスがリリースされました。しかし、中にはクローズに追い込まれたサービスも少なくありません。

イベントでは、そのような市場の変化があった中でも、Peatixがリリースから8年間にわたって成長し、400万人の会員を抱えるサービスになった要因についても語られました。

岩井さん「要因の一つは『誰でも使える』サービスを目指した点にあると考えています。スマートフォンやパソコンを普段使わないシニア世代であっても、感覚的にチケットが発行できるくらいシンプルなUI、UXにすることを意識しました。さらに、問い合わせにはすぐに対応できるようカスタマーサポート体制も構築。当初はメンバーの半分以上がカスタマーサポートに従事していたほど、顧客体験の向上には力をいれていましたね」

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また、2016年には同じ興味関心を持つ人が集まれるグループ機能や、参加履歴等に基づいたイベントレコメンド機能を実装。興味関心に沿ったイベントやコミュニティへの参加を容易にする仕組みを整えました。

このように、単なる「チケット販売サービス」ではなく、人と人をつなげる「コミュニティプラットフォーム」として競合他社との差別化を図ったことも、シェアを広げる大きな要因の一つとなったと原田さんは分析します。

原田さん「チケット販売サービスは、チケットを送付して決済を行う単純な仕組みで成り立っています。参入が容易だからこそ、競合が多く差別化も図りにくい。また、手数料ビジネスのため、動員数が多い大型イベントにマーケットが集中します。

だからこそ、Peatixは地域で日常的に開催される小規模なイベントにも裾野を広げました。ユーザーがより日常的に、そして気軽にイベント開催できるようにサポートするコミュニティプラットフォームを目指すことで競合他社との差別化を図ったのです」

 

欧米市場で戦える日本発のサービスを目指す

現在、米国本社の他に、日本、シンガポール、マレーシアに支社を持ち、27ヶ国にユーザーを抱えるPeatix。最後は、Peatixが今後どのような展開を見据えているのかが原田さんから語られ、イベントは幕を閉じました。

原田さん「現在、欧米で米国発のスタートアップと同等に戦えている日本発のサービスはほとんどありません。生後数ヶ月で米国に移住して人生の多くを過ごしてきた私にとって、いつか欧米市場で米国のスタートアップと肩を並べるサービスを作ることは長年の目標でもありました。だからこそ、Peatixでは海外展開を積極的に進めています。

まずは、2013年にシンガポールに進出。翌年にはマレーシア法人を設立しました。一時は東南アジア地域の利益が全体の3割程度を占めるなど、売上も伸びています。この勢いを保ったまま、今後は欧米市場でのシェアをさらに伸ばしていきたいと考えています」

イベント終了後は、参加者が自由に交流を行う懇親会も実施。登壇者であるPeatixの経営陣と意見交換を行う参加者の方もおり「有意義な時間となった」との意見も聞かれました。

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次回のFounders Night Marunouchiは、10月30日(水)に開催予定です。
どなたでも無料でご視聴頂けますので、こちらよりお気軽にお申し込みください。

【過去Founders Night Marunouchイベントレポート一覧】
https://www.the-mcube.com/journal/journal_tag/founders-night-marunouchi

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