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お米のバイオマスプラスチック、波力発電、認知機能トレーニングツールなど。サステナブルな社会づくりに貢献する、東京21cクラブメンバー4社が登場──丸の内フロンティアシリーズ「Startup Pitch in Marunouchi」

お米のバイオマスプラスチック、波力発電、認知機能トレーニングツールなど。サステナブルな社会づくりに貢献する、東京21cクラブメンバー4社が登場──丸の内フロンティアシリーズ「Startup Pitch in Marunouchi」

2022年9月22日(木)、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」が開催する「Startup Pitch in Marunouchi」を実施しました。

このイベントは、東京21cクラブメンバーに所属するスタートアップがピッチを行い、コメンテーターから事業に対するフィードバックなどを得るものです。

登壇したのは、バイオマスレジンホールディングス代表取締役CEOの神谷雄仁さん、グローバルエナジーハーベスト代表取締役の速水浩平さん、マザーハウス取締役の王宏平さん、トータルブレインケア代表取締役社長の河越眞介さん。

コメンテーターを務めるのは、日本ベンチャーキャピタルシニアパートナーの照沼大さん、MASSパートナーズ法律事務所共同代表パートナー溝田宗司さんです。

この記事では、持続可能な社会の実現を目指す企業4社によるピッチイベントの模様をレポートでお伝えします。

 

バイオマスレジンホールディングス:CO2排出量を削減する、RiceResin®︎

バイオマスレジンホールディングス

 

最初に登壇したのは、バイオマスレジンホールディングス代表取締役CEOの神谷雄仁さん。同社は、お米由来のバイオマスプラスチック「RiceResin(ライスレジン)®︎」や生分解性プラスチック「Neoryza(ネオリザ )」を開発しています。

冒頭、神谷さんが事業を始めるきっかけとなった、プラスチックを取り巻く課題について言及しました。

神谷さん「プラスチックの廃棄によって排出される二酸化炭素は、全国で年間2,000万トン。日本の温室効果ガス排出量の1.5%に相当し、地球温暖化や異常気象にも大きな影響を与えています。また、大量のプラスチックが海に流れて、2050年までに海の中にあるプラスチックが魚の量を超えるとの予測もあり、海洋汚染等の原因にもなっているのです。これに対して、日本の政府は2050年までには温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを宣言。企業としても、早急に取り組まないといけない課題です」

バイオマスレジンホールディングス代表取締役CEO 神谷雄仁さん

 

同社は「お米×テクノロジーで社会課題を解決する」を掲げ、「RiceResin®︎」の技術開発・製品化に取り組んでいます。

神谷さん「RiceResin®︎は、食用に適さない古米やお米を加工する際に発生する破砕米などを、独自の技術でプラスチックにアップサイクルします。最大70%のお米を混ぜられるため、石油系プラスチックの含有量を少なくできます。これにより、CO2の排出量を低下させるだけでなく、廃棄されるはずのお米を使用するためフードロス削減にもつながります」

政府は、2022年4月から使い捨てプラスチック製品を提供する事業者に対して、フォークや歯ブラシなどのプラスチック製品の削減目標や提供方法の見直しを求めています。それに対し、同社はRiceResin®︎を活用したゴミ袋やスプーン、おもちゃなどの製品を開発・販売しています。

「RiceResin®︎」の使用量が増えると、CO2の排出量を減らせるだけでなく、農業支援にもなると語ります。

神谷さん「国内では、農業従事者の数が年々減少し、耕作放棄地の面積も増加傾向にあります。そこで耕作放棄地を活用し、バイオマスプラスチック「RiceResin®︎」の原材料となるお米を作ることで、農業支援につなげられます。

さらに、ピープル株式会社は「RiceResin®︎」を原料とした『お米のおもちゃ』を販売しています。『お米のおもちゃ』のユーザーと田植えや稲刈りをするプロジェクトも構想しており、地域活性化にも貢献していきたいと考えています」

今後はパソナグループと協業し、2023年秋には淡路島R&Dセンターの設立を予定しています。それに先駆けて、2022年7月から企業や学校を対象にしたSDGsが学べる『サステナブル研修プログラム』の提供を開始しました。

CO2排出量削減は国内に留まらず、世界共通課題。最近はアジア各国からも協業の引き合いが来ており、同社としては工場運営のノウハウを提供する形での海外展開も進める計画です。

他にも、米ぬかを原料としたヘルスケア商品の開発・製造や、フードテック領域の参入も検討しています。

神谷さん「今後の事業展開に伴い、営業や経営企画、デザインなどの仲間も募集中です。気になる方は、ぜひご連絡ください」と参加者に呼びかけました。

 

グローバルエナジーハーベスト:日本のエネルギー問題を波力発電で解決する

株式会社グローバルエナジーハーベスト

 

続いて登壇したのは、グローバルエナジーハーベスト代表取締役の速水浩平さん。同社は、「循環型波力揚水発電」を始めとした波力発電や、振動力発電、温度差発電などの発電事業を展開しています。

冒頭で、「なぜ、波力発電に着目したのか?」について速水さんは述べました。

速水さん「太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーと比較して、波力発電は安定的な発電量があります。例えば、同面積あたりの年間発電量を太陽光発電と比較すると、波力発電の方が約8.5倍も多いです。

また、太陽光発電や風力発電は天気の影響を大きく受ける一方で、波の状況が予測しやすいため、比較的安定して稼働させることが可能です。そのような理由もあり、波力発電に着目しました」

 

グローバルエナジーハーベスト代表取締役 速水浩平さん

 

同社が独自に開発したのが「循環型波力揚水発電」です。この発電方法は、波力発電の課題であったコストや安全性、漁業との兼ね合いという3つをクリアすると言います。

速水さん「循環型波力揚水発電は、装置内の水が循環することで発電します。まず、波の力で海面に設置したタンク内のフロートが押し上がります。押し上げられた水が装置内を循環することで、電気を発生させます。

発電機は海水に触れない構造になっているため、海洋生物の付着を防いだり、高波による破損や漏電の危険を回避できるので、低コストかつ安全に稼働できます。また防波堤や港などの近くに設置できるため、漁業への影響を最小限に押さえられます」

キャプション)波の力でフロートが上がり、タンク内の水が循環することで発電している

 

さらに、同社は小〜中波浪向きの「往復型回転加速式発電」を開発。中〜大波浪向きの循環型波力揚水発電と組み合わせることで、波の大きさに応じて設備の選択が可能に。より効率的に波力を電気に変えられます。

質疑応答では、照沼さんから「今後、波力発電を普及していく上で、どれくらいの設備投資をして、今後はどれくらいの資金調達を検討しているか教えて下さい」と質問が投げかけられました。

速水さん「昨年、約3億7,000万円の増資をしました。その目的は久米島で実証実験するためです。現在は、実証実験の2回目の段階です。そして上場準備に向けて5〜6億円の調達を考えています」

照沼さんから「今年に入って、資金調達環境は厳しくなりつつあるので、企業と業務提携を結んで活動するなど工夫が必要かもしれません。波力発電の取り組みは私も大変注目しておりますので、引き続き応援しています」と語られました。

日本ベンチャーキャピタル株式会社シニアパートナーの照沼大さん

 

最後に、速水さんは「日本のみならず世界においても、エネルギー問題は深刻です。その解決策の一つとして、波力発電を選んでもらえるよう、私たちも開発を続けています。ご興味ある方は、ぜひご連絡ください」とピッチを締めくくりました。

 

マザーハウス:発展途上国から世界に通用するブランドを目指す、MOTHERHOUSE

株式会社マザーハウス

 

続いて登壇したのは、株式会社マザーハウス取締役の王宏平さん。同社は、「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念に掲げ、アパレルブランド「MOTHERHOUSE」を運営しています。

同ブランドは「発展途上国から優れた商品を生み出すことができるのではないか?」という創業者の山口絵理子氏による思いから、2006年にバングラデシュでスタートしました。現在は、インドやネパール、スリランカなど10カ国で製造・販売を行っています。

特徴的なのは、素材の開発から生産、販売まで一貫したサプライチェーンを保有していることです。

王さん「私たちがサプライチェーン全体を管理することで、お客様だけでなく製造・販売に関わる全ての人を笑顔にしたいと考えています。

創業間もない頃に、創業者や役員が集まって、ものづくりを取り巻く労働環境について話したことがありました。そこで、従業員に対して正しい賃金が支払われていなかったり、物流業界で働いている方が過重労働を強いられていたり、不利益を被っている人たちがいるという意見が出ました。

私たちは、そのような事態を発生させないためにもサプライチェーン全体に責任を持つことを決めています。工場で働いている現地のスタッフが誇りを持ち、笑顔で働ける環境づくりを目指します」

マザーハウス取締役 王宏平さん

 

さらに、同社は新しい商品を製造・販売するだけに留まらず、役目を終えた商品を回収するリサイクル事業も行っています。

王さん「レザーバックを数年使い続けていると、くたびれてしまい、最終的には捨てられることもあります。それらのバッグを回収し、解体・修理することでリメイク商品『RINNE』に生まれ変わらせています」

質疑応答の時間では、溝田さんから「海外に複数の工場を持っていらっしゃいますが、現地の方にマザーハウスの理念を浸透させたり、指示通りに働いてもらうために相当苦労もあったのではないでしょうか?」と疑問が投げかけられました。

MASSパートナーズ法律事務所共同代表パートナー 溝田宗司さん

 

王さん「おっしゃる通り、非常に苦労しました。バングラデシュの工場は、すべて現地の方にお任せしていて、日本人は一切関与していません。一見すると上手く回っているように見えるかもしれませんが、実際はかなり時間をかけて現地との信頼関係を構築しています。

もちろん、信頼関係の構築で失敗したこともあります。例えば、インドのコルカタにある工場では、実力に応じて給与を支払うことを発表しました。ところが、年功序列が一般的なコルカタでは一部の人たちの不満があり、受け入れてもらえず……。結果、私たちが譲歩することになりました。

現地の方と上手くやっていくには時間がかかりますが、現地の方の可能性を信じ、地道に私たちの考えを伝えていくことが大事ですね」

最後に、王さんは「新型コロナウイルスの影響が落ち着き、ようやく世界を舞台にした活躍を目指せるようになりました。世界に通用するブランドを作りたいという野心を持った仲間を募集しています。ご興味がある方は、ぜひご連絡ください」と語り、ピッチを締めくくりました。

 

トータルブレインケア:認知機能をチェックし、トレーニングするツール、CogEvo

株式会社トータルブレインケア

 

最後に登壇したのは、トータルブレインケア代表取締役社長の河越眞介さん。同社は、認知症の予防や早期発見を目指し、認知機能のチェック&トレーニングツール「CogEvo(コグエボ)」の研究開発を行っています。

「認知機能の検査は医療機関ではなく、日常生活の中で行われるべきなのではないか?」という疑問を抱いたと河越さんは言います。

河越さん「これまでの検査は、主に医療機関で実施されていました。専門的な人材が対応しなければならなかったり、検査に時間がかかったり、あまり効率的ではありません。また、最近ではコンピューターによる判定もありますが、もっと手軽に日常的に検査できるツールが必要なのではないかと考えました。そこで、ナショナルセンターや大学の先生と協力して、ゲーム感覚で認知機能をチェックできるクラウドツールの開発を始めたのです」

株式会社トータルブレインケア代表取締役社長 河越眞介さん

 

「CogEvo」は、「見当識」「注意力」「記憶力」「計画力」「空間認識力」のバランスをチェック。また、自分が伸ばしたい認知機能に合わせてトレーニングも可能です。これらを定期的に行うことで、基礎数値や経時変化の把握ができます。

現在は、40以上の自治体が認知症の予防対策としてCogEvoを導入しています。

河越さん「一般的に『認知機能』という言葉にピンと来る方は少なく、CogEvoの普及を妨げる一つの要因になっていました。そこで『脳体力』という名前で商標登録を取得しました。理解しやすい言葉になったおかげで、自治体への展開事例が増えています」

CogEvoのみならず、企業とR&Dを結び、様々な領域で製品やソリューションの開発をしています。CogEvoをより多くの方に認識してもらうために、知財戦略やコンサルティングなどにも取り組んでいます。

河越さん「CogEvoはあくまでソフトウェアです。しっかりと企業や特定の領域で導入を進めてもらうためにも、コンサルティングを通してシニア層の囲い込みや企業の健康経営、スポーツ分野などでの活用を推し進めています」

ここで、照沼さんから「CogEvoはゲーム要素を取り入れていることが特徴だと思いますが、実際に高齢者の方はどのように利用されているのでしょうか?」と疑問が投げかけられました。

河越さん「eスポーツの一つとして、おじいちゃん、おばあちゃん共にご利用いただいています。もともとは認知機能の効果測定として導入いただいていたのですが、おじいちゃん、おばあちゃん共に反応が良く、現在は対戦型機能を導入して、デイサービスで利用されています」

さらには、学生や親世代にまでCogEvoが広がっていると言います。

河越さん「日々のストレスによる認知機能の低下が起きていないかチェックするツールとして、親世代や学生さんなど幅広い年代で利用することができます。今後は、親子三世代で楽しみながら認知機能のトレーニングが行えるようになるのではないかと考えています」

最後に、河越さんは「認知機能の見える化を通して、新たな価値を創造し、社会に貢献したいと考えています。弊社の取り組みにご興味ある方は、ぜひご連絡ください」と語り、ピッチを終了しました。

コメンテーターや観覧者から様々な質問が飛び交い、終始熱気に包まれていた本イベント。イベント後の懇親会では、観覧者同士の交流も生まれ、盛況のうちに幕を閉じました。丸の内フロンティアは、今後も様々なイベントを企画・実施していきます。次回以降もぜひご期待ください。

 

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