JOURNAL

AIを活用した医療機器や女性の福利厚生サービス、水素ガス吸引具など。ヘルスケア業界で次世代テクノロジーを展開する3社が登場──丸の内フロンティアシリーズ「Startup Pitch in Marunouchi」

AIを活用した医療機器や女性の福利厚生サービス、水素ガス吸引具など。ヘルスケア業界で次世代テクノロジーを展開する3社が登場──丸の内フロンティアシリーズ「Startup Pitch in Marunouchi」

2022年128日(木)、三菱地所が運営するEGGオープンイノベーションコミュニティ「The M Cubeが開催する「Startup Pitch in Marunouchi」を実施しました。

このイベントは、The M Cubeに所属するスタートアップがピッチを行い、コメンテーターから事業に対するフィードバックなどを得るものです。

登壇したのは、アイリス取締役副社長の加藤浩晃さん、スルミ代表取締役CEOの石塚つばささん、アクアバンク代表取締役の竹原タカシさんです

コメンテーターを務めるのは、日本ベンチャーキャピタル株式会社シニアパートナーの照沼大さん、MASSパートナーズ法律事務所共同代表パートナー溝田宗司さんです。

この記事では、AIを活用したサービスを展開し、ヘルスケア業界を引っ張る3社によるピッチをレポートでお伝えします。

 

アイリス:AIの技術でインフルエンザ検査の痛みを軽減する医療機器、nodoca

株式会社アイリス

 最初に登壇したのは、アイリス取締役副社長の加藤浩晃さん。同社は「みんなで共創できる、ひらかれた医療をつくる。」をミッションに掲げ、人工知能(AI)の技術を活用した医療機器nodoca(ノドカ)」を開発しています。

nodocaは、カメラがついた検査機器で咽頭(のど)を撮影してインフルエンザの診断をします。発症直後から検知でき、数十秒で結果をだせます。また、既存の検査キットと比べ、痛みが少ないのが特徴です。     

従来のインフルエンザの検査よりも「楽で、早い」を実現するために、2017年の秋から研究を開始し、ソフトウェアとハードウェア両方の開発を続けてきた同社。特にハードウェアの開発には課題が多かったといいます。

加藤さん「まず利用者に使ってもらいやすくするためには、社内だけでデバイスを作りきるのは難しく、町の工場や医療機関などと連携先しながら開発を進めました。

会社としての一番の競争力はAIの技術力、医療機器の開発力です。より性能が良い機器をつくるために、現在のデバイスまでに何回も試行錯誤を重ねてきました。現在のデバイスは6代目の機器になります。また、高いクオリティを保って一定期間で多くの数を生産するまでには、多くの準備が必要でした。

ハードウェアを作るには、かなりの労力と時間が必要です。しかし、ソフトウェアだけのベンチャーだと、競争優位性はなかなか生まれないと考えています」

アイリス取締役副社長 加藤浩晃さん

 nodocaの販売に加え、ヘルステックにまつわるデータやニュース、事業分析などの記事を掲載しているサイト「Healthtech DB」も運営している同社。国内、海外とヘルスケアの動向を踏まえて、加藤さんは今後の市場の広げ方について語りました。

加藤さん「普段カメラを使った検査で使用する『内視鏡』はおおよそ800万円から1000万円ほど。対して、nodocaは商品の定価としては150万円ほどです。多くの医療現場からは『この値段でこのスペックはすばらしい』との声をいただいています。

今後も改良を続けていきながら、より多くの方々に医療機器を届けていきたいです」

ピッチを終え、コメンテーターの溝田さんが「国際特許は持っていないのであれば、ライセンスを取得して市場を広げることも視野にいれてみてはどうか」とコメント。加藤さんは「なかなか詳細は話せないが会社で対応をしている」と回答しました。

MASSパートナーズ法律事務所共同代表パートナー溝田宗司さん

 同社は、現在一緒に働く仲間も募集中。20236月からは大企業の出向も受け入れる予定だそうです。プロダクトの開発からコーポレートまで、デジタル医療やAI医療にご興味ある方、ぜひこちらをご覧ください。

 

スルミ:AIを活用した女性のための福利厚生サービス、フェミルン

株式会社スルミ

続いて登壇したのは、スルミ代表取締役CEOの石塚つばささん。同社は「女性の力で、世界に彩りを」をビジョンに掲げ、女性が生き生きと働けるサポートや、企業の健康経営を実現するため事業を展開しています。

まずは、石塚さんが創業した背景を語りました。

石塚さん女性の健康支援にまつわるアンケートによると、全国の企業約367万社(総務省・経済産業省発表「経済センサス活動調査」20216月時点)あるうち健康経営優良法人社(「健康経営優良法人認定制度」は、経済産業省が企業の健康経営の取り組みを促進するため、2016年に創設された評価制度)は、たったの約1万5000社(「健康経営優良法人2022」認定社数)だそうです。また『職場は女性の不調に対して理解があるか』という質問には、『そう思わない』という回答が半数を占める結果でした(「女性健康支援とフェムテック」日経BP社)。

私自身も、就活の際に上場企業の人事部の女性から『生理は軽いですか』と聞かれたことがあります。仕事とは関係のないところで評価されているように感じ、質問自体に違和感を覚えました。このような出来事をきっかけに、日本は女性が働きにくいのではないかと感じ、起業を決意しました

スルミ代表取締役CEO 石塚つばささん

 同社が展開するのはBtoB向けの2つの事業です。1つは20231月にリリース予定の、女性の福利厚生サービス「フェミルン」。認知行動療法に基づいて作られたAIのチャットボットで、悩みをカジュアルに相談でき、さらにはカウンセリングを受けて女性の体調に合わせた適切なアドバイスをもらえます。また、生理やモチベーションの管理をするための機能があり、女性の悩みに幅広く寄り添ってくれるツールです。

もう1つは、2023年夏にリリース予定の「フェミルン for Biz」。同サービスは、サーベイ機能を用い従業員にアンケートをとり、組織体制の施策を検討ができたり、女性の管理職や従業員の人材紹介を受けたりできます。メンタルの不調や疾患による長期欠勤者または退職者を減らすために提供しています。

2023年に2つの商品のリリースを控えている同社。最後に石塚さんは「フェミルン」を通して、どのようにサービスを展開していくのか、今後の展望を語りました。

石塚さん「まずは、直近リリース予定の『フェミルン』は、不調の対応提案や生理のモチベーション管理だけでなく、医師とのカウンセリングや臨床心理士との会話の予約、ピルの処方や漢方の処方など、サービスが担える範囲も徐々に広げていきます。

また、骨粗鬆症や婦人科系のがん検査の予約など、女性特有の疾患を予防するための機能も展開予定です。今後も女性が働きやすく、活躍できる環境を作るためにテクノロジーを通してサポートをしていきます」

コメンテーター照沼さんからは「年代によって女性の悩みは変わるが、それについてはどう取り組んでいくのか」と質問がありました。

日本ベンチャーキャピタル株式会社シニアパートナー 照沼大さん

 石塚さんは、「おっしゃる通り、年代やライフステージによって、女性の悩みに変化はありますが、例えば、メンタルの落ち込みは、生理、妊活、産後、更年期などのステージが違っても共通する部分が多くあります。当社は、体調面のケアなど20代から50代60代まで働く女性全てをサポートしていきたいと考えています。そのための資金調達先や協業パートナーなどを見つけていきたいです」と回答しました。

 

アクアバンク:KENCOSを通して、誰しもが健康のために水素を「吸う」世界へ

株式会社アクアバンク

最後に登壇したのは、アクアバンク代表取締役の竹原タカシさん。水素をテーマに、ミネラル水素水のウォーターサーバーや、ポータブル水素ガス吸引具「KENCOS」を展開しています。

美容・健康にいいと言われる「水素」。抗酸化・抗炎症・抗アレルギー効果に加え、疲労回復・睡眠改善・血流改善・肥満抑制など、多様な効果を発揮することが検証されてきたそうです。

同社もこれまで、水素ガス吸引により、心身機能への効果の検証や、試薬や消耗品を使用しない成分測定をする近赤外分光(NIRS)による脳機能の解析など、大学と連携してさまざまな検証をしてきました。

竹原さん2018年には鹿児島県や筑波大学と連携し、水素吸引による認知機能への影響を調査しました。地域在住高齢者を対象に1ヵ月間にわたって、水素吸引をしてもらい、その前後の様子を比較した後心身の健康状態にどう影響するのかを調べました。

結果、軽度認知障害の可能性がある高齢者に対して、認知機能を高める効果を確認。また、膝運動や姿勢のふらつきを低下させるなど、体性感覚機能の向上も示唆されたのです」

アクアバンク代表取締役 竹原タカシさん

2022年10月には、ミドリムシを活用した食品や化粧品を販売するユーグレナとの協業を発表。美容・健康のため「吸うサプリメント」をテーマに、「KENCOS」専用のユーグレナエキスを配合したフレーバーを開発しました。

人間が生きていくために必要な栄養素のなかでも、ビタミンやミネラルなどさまざまな健康成分を含むユーグレナエキス。無味無臭の水素にフレーバーを足すことにより、吸う感覚を楽しめるようになることに加え、より健康促進にもつながるそうです。

同社は誰しもが当たり前に健康に生きられる世界を目指し、サービスを展開しています。

竹原さん「現在、ヘルステック業界ではアプリなどで健康を管理するサービスは既に提供されている一方で、その他のソリューションはまだ少ない印象です。そのため、まずはユーグレナさんとのコラボレーションを皮切りに、KENCOSの認知を上げていき、今後は健康のために水素を『吸う』世界を当たり前にしていきたいです。

2022年より約10カ国の海外へ展開を開始しました。そのうち4カ国は弊社と独占契約を結んでおります。今後も海外を視野に入れ、サービスを拡大させていきたいです」

コメンテーターの照沼さんからは「水素水事業では、どこが競争優位性の要因になりうるか」と質問。竹原さんは「プロダクトを開発するために、治験を繰り返して、多くのデータやエビデンスを持つことが大事ですね」と回答しました。

最後は「今後もloTアプリの開発や、ウォーターサーバーのレンタル事業を広げていきたい。ぜひ興味を持ってくれた方々はご連絡ください」と締めくくりました。

最先端のテクノロジーを駆使した3社のサービスに、多くの参加者が興味津々。さらには、登壇者同士も互いのサービスに関心が高く、ディスカッションする場面も見られました。イベント後は、参加した方々の交流を実施して、意見交換をしました。丸の内フロンティアは、時代のトレンドに合わせた様々なイベントを企画・実施していきます。次回以降もぜひご期待ください。

 

>>最新イベントはこちら

【過去開催・丸の内フロンティアのイベントレポート一覧】
https://www.the-mcube.com/journal/journal_tag/marunouchi-frontier

【The M Cube 公式SNS】
\Facebookフォローがまだの方は是非この機会に!/
(Facebook) https://www.facebook.com/themcubemarunouchi
(YouTube)https://www.youtube.com/channel/UC3KfG8v_4dEvbcyqjQnatrg

OTHER JOURNAL

脳ドック、農業DX、コミュニケーションロボットなど。テクノロジーの力で社会を変革する、東京21cクラブメンバー5社が登場──丸の内フロンティアシリーズ「Startup Pitch in Marunouchi」

READ MORE

脳ドック、農業DX、コミュニケーションロボットなど。テクノロジーの力で社会を変革する、東京21cクラブメンバー5社...

2024.4.24

「世界一」医療の制度が整った日本で、オンライン相談サービスを立ち上げたKids Public・橋本氏の挑戦───Founders Night Marunouchi vol.39

READ MORE

「世界一」医療の制度が整った日本で、オンライン相談サービスを立ち上げたKids Public・橋本氏の挑戦───Founders Ni...

2024.4.24

きっかけは、出産・育児。「日本の金融リテラシーを上げる」ため、未経験のアプリ開発に挑む───Founders Night Marunouchi vol.38

READ MORE

きっかけは、出産・育児。「日本の金融リテラシーを上げる」ため、未経験のアプリ開発に挑む───Founders Night Marun...

2024.4.24

EXPLORE MORE